法人破産を検討する段階で確認しておきたいこと

想定読者事業の継続が難しくなってきた中小企業の経営者

この記事の結論

法人破産では、申立てそのものよりも、事業を停止するタイミングと、その前後の段取りが結果に影響します。従業員への説明、資産の保全、経営者個人の保証債務の扱いは、いずれも事前に順序を決めておく必要があります。破産以外の選択肢が残っているかどうかも、あわせて確認する価値があります。

この記事で扱うこと

法人破産は、申立書を出せば終わりという手続ではありません。実務上は、申立ての前後にどのような順序で何を行うかが、その後の負担を左右します。

ここでは、破産を「決めた後」ではなく「検討している段階」で確認しておきたい点を整理します。

手続の大まかな流れ

法人破産の手続は、おおむね次の順に進みます。

  1. 相談・方針の検討
  2. 事業停止(受任通知の発送)
  3. 申立ての準備(資料の収集、債権者一覧の作成)
  4. 裁判所への申立て、破産手続開始決定
  5. 破産管財人による調査・換価・配当
  6. 手続の終了(法人格の消滅)

期間は、財産の内容や債権者の数によって変わります。単純な事案で半年程度、資産の換価に時間がかかる場合はそれ以上かかることもあります。

予納金について

申立てにあたっては、裁判所に予納金を納める必要があります。金額は事案の規模によって異なります。この費用を確保できるかどうかが、進め方を決める要素のひとつになります。

事業停止のタイミング

検討段階で最も重要なのが、いつ事業を止めるかです。

早すぎる停止も、遅すぎる停止も避けたい

事業を止めると、売掛金の回収が難しくなり、従業員の対応も一斉に必要になります。一方で、資金が完全に尽きるまで続けると、申立ての費用も、従業員への支払いも確保できなくなります。

そのため、資金繰り表を見ながら、次の点を事前に決めておきます。

  • どの時点で新規の受注を止めるか
  • 仕掛かり中の案件をどこまで完了させるか
  • 従業員にいつ、どのように説明するか
  • 事務所・工場の明渡しをどう進めるか

受任通知を出す日を起点に考える

弁護士が債権者に受任通知を送ると、そこから状況が動き始めます。通知を出す日を起点として、その前後にやるべきことを逆算しておくと、混乱が小さくなります。

従業員への影響

未払いの給与や退職金がある場合、未払賃金立替払制度の対象となることがあります。ただし、対象となる期間や上限額に制限があり、手続にも順序があります。

また、離職票の交付や社会保険の資格喪失手続など、事業停止後も行う事務が残ります。誰がこれを担当するかを決めておかないと、従業員の再就職や失業給付の受給に支障が出ることがあります。

取引先への影響

取引先への支払いを止めるタイミングは、公平性の観点から慎重に判断する必要があります。特定の債権者にだけ返済すると、後に否認の対象となる可能性があります。

「世話になった取引先にだけは払っておきたい」というお気持ちが生じる場面ですが、この点は事前にご説明します。

経営者個人の保証債務

法人の借入に経営者個人の保証が付いている場合、法人の破産だけでは保証債務は消えません。個人としての処理を別に検討する必要があります。

破産以外の選択肢も検討する

経営者保証に関するガイドラインを利用できる場合、一定の要件のもとで、破産によらずに保証債務を整理できることがあります。手元に残せる資産の範囲も、破産の場合とは異なります。

利用できるかどうかは事案によりますので、法人の方針を決める段階で、個人の処理とあわせて検討することをお勧めします。

破産以外の選択肢が残っていないか

事業に収益力が残っている場合、次のような選択肢を検討できることがあります。

  • 金融機関との協議による返済条件の見直し
  • 中小企業活性化協議会の手続
  • 事業の一部を第三者に譲渡し、残りを整理する方法

これらが使えるかどうかは、収益の状況、債権者の構成、時間的な余裕によって変わります。破産を前提に相談された結果、別の方法を選ぶことになる場合もあります。

まとめ

  • 法人破産では、申立てそのものより、事業停止のタイミングと前後の段取りが結果に影響します。
  • 従業員への説明、取引先への支払いの扱い、資産の保全は、それぞれ順序を決めておく必要があります。
  • 経営者個人の保証債務は法人の破産では消えないため、個人の処理を並行して検討します。
  • 破産以外の選択肢が残っているかどうかも、方針を決める前に確認する価値があります。

具体的な進め方は、事案の内容によって変わります。判断がつかない段階でも構いませんので、お問い合わせからご連絡ください。

よくある質問

破産を決めていない段階でも相談できますか。
できます。むしろ決める前のほうが、事業譲渡や私的整理といった他の選択肢を含めて検討できます。相談したからといって、破産を選ばなければならないわけではありません。
会社が破産すると、経営者個人も必ず破産することになりますか。
いいえ。法人の破産と経営者個人の手続は別です。個人保証がある場合は個人の処理も必要になりますが、経営者保証に関するガイドラインの利用など、破産以外の方法を検討できる場合もあります。
従業員の給与が払えない場合はどうなりますか。
未払賃金立替払制度の対象になる場合があります。要件と手続の順序があるため、事業停止の前に確認しておくことをお勧めします。
費用が払えない場合でも申立てはできますか。
手元資金の状況によって進め方が変わります。事業停止前であれば、費用を確保したうえで申し立てられる場合があります。資金が尽きてからでは選べる方法が限られるため、早い段階でご相談ください。

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