この記事で扱うこと
法人破産は、申立書を出せば終わりという手続ではありません。実務上は、申立ての前後にどのような順序で何を行うかが、その後の負担を左右します。
ここでは、破産を「決めた後」ではなく「検討している段階」で確認しておきたい点を整理します。
手続の大まかな流れ
法人破産の手続は、おおむね次の順に進みます。
- 相談・方針の検討
- 事業停止(受任通知の発送)
- 申立ての準備(資料の収集、債権者一覧の作成)
- 裁判所への申立て、破産手続開始決定
- 破産管財人による調査・換価・配当
- 手続の終了(法人格の消滅)
期間は、財産の内容や債権者の数によって変わります。単純な事案で半年程度、資産の換価に時間がかかる場合はそれ以上かかることもあります。
予納金について
申立てにあたっては、裁判所に予納金を納める必要があります。金額は事案の規模によって異なります。この費用を確保できるかどうかが、進め方を決める要素のひとつになります。
事業停止のタイミング
検討段階で最も重要なのが、いつ事業を止めるかです。
早すぎる停止も、遅すぎる停止も避けたい
事業を止めると、売掛金の回収が難しくなり、従業員の対応も一斉に必要になります。一方で、資金が完全に尽きるまで続けると、申立ての費用も、従業員への支払いも確保できなくなります。
そのため、資金繰り表を見ながら、次の点を事前に決めておきます。
- どの時点で新規の受注を止めるか
- 仕掛かり中の案件をどこまで完了させるか
- 従業員にいつ、どのように説明するか
- 事務所・工場の明渡しをどう進めるか
受任通知を出す日を起点に考える
弁護士が債権者に受任通知を送ると、そこから状況が動き始めます。通知を出す日を起点として、その前後にやるべきことを逆算しておくと、混乱が小さくなります。
従業員への影響
未払いの給与や退職金がある場合、未払賃金立替払制度の対象となることがあります。ただし、対象となる期間や上限額に制限があり、手続にも順序があります。
また、離職票の交付や社会保険の資格喪失手続など、事業停止後も行う事務が残ります。誰がこれを担当するかを決めておかないと、従業員の再就職や失業給付の受給に支障が出ることがあります。
取引先への影響
取引先への支払いを止めるタイミングは、公平性の観点から慎重に判断する必要があります。特定の債権者にだけ返済すると、後に否認の対象となる可能性があります。
「世話になった取引先にだけは払っておきたい」というお気持ちが生じる場面ですが、この点は事前にご説明します。
経営者個人の保証債務
法人の借入に経営者個人の保証が付いている場合、法人の破産だけでは保証債務は消えません。個人としての処理を別に検討する必要があります。
破産以外の選択肢も検討する
経営者保証に関するガイドラインを利用できる場合、一定の要件のもとで、破産によらずに保証債務を整理できることがあります。手元に残せる資産の範囲も、破産の場合とは異なります。
利用できるかどうかは事案によりますので、法人の方針を決める段階で、個人の処理とあわせて検討することをお勧めします。
破産以外の選択肢が残っていないか
事業に収益力が残っている場合、次のような選択肢を検討できることがあります。
- 金融機関との協議による返済条件の見直し
- 中小企業活性化協議会の手続
- 事業の一部を第三者に譲渡し、残りを整理する方法
これらが使えるかどうかは、収益の状況、債権者の構成、時間的な余裕によって変わります。破産を前提に相談された結果、別の方法を選ぶことになる場合もあります。
まとめ
- 法人破産では、申立てそのものより、事業停止のタイミングと前後の段取りが結果に影響します。
- 従業員への説明、取引先への支払いの扱い、資産の保全は、それぞれ順序を決めておく必要があります。
- 経営者個人の保証債務は法人の破産では消えないため、個人の処理を並行して検討します。
- 破産以外の選択肢が残っているかどうかも、方針を決める前に確認する価値があります。
具体的な進め方は、事案の内容によって変わります。判断がつかない段階でも構いませんので、お問い合わせからご連絡ください。